iOS 7におけるiBeaconの期待

iOS 7におけるiBeaconの期待

AppleがWWDCでiOS 7を初めて発表した際(「Apple、完全に再設計されたiOS 7を発表」2013年6月10日参照)、SDKのスライドの一つに、当日の発表ではほとんど触れられなかった機能、iBeaconが記載されていました。当時、Appleがこの機能について報道陣にあまり語らなかったのも無理はありません。iBeaconは、派手な新しいインターフェースデザイン、洗練された視差効果、コントロールセンターのような便利な機能とは異なり、画像と5語のキャプションで説明するのが非常に難しいからです。この機能は、雑音に埋もれてしまっていたでしょう。

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皮肉なことに、iBeaconの目的は、ユーザーが物を見つけるのを助けること、あるいはiOSデバイスが自分自身を見つけるのを助けることなのです。iBeaconは、開発者がアプリを設計する際に使用できるCore Locationフレームワークへの追加機能群の総称です。新しいハードウェアでもアプリでもなく、機能なのです。アプリはiBeaconを使うことで、「私はどこにいるのか?」という問いに、GPSのように地図上の位置ではなく、デバイスが他のデバイスに対して相対的にどこにいるのかで答えることができます。
具体的には、iBeaconとして機能する他のデバイスを基準に、デバイスがどこにいるのかを示すのです。

iBeaconは、ほぼどこにでも設置できる小型の無線機です。iPhoneなどのiOSデバイスが範囲内(数十フィート程度)に入ると、iBeaconを検知し、距離を推定します。iBeaconにはそれぞれ固有の識別子があるため、iPhoneが複数のiBeaconの範囲内にある場合でも、それらを区別できます。

「iBeaconってどこで手に入るの?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。ポケットの中を探してみてください。iPhone 4S以降(または第3世代iPad以降)をお持ちなら、すでにiBeaconが搭載されているはずです。しかし、Estimoteなど、他社もスタンドアロンのiBeaconを製造しています。

iBeaconを実現しているのは、Bluetooth 4.0と、BLE(Bluetooth Low Energy)をサポートするBluetooth無線です。その名の通り、BluetoothのBLEはバッテリー消費量が非常に少なく、専用のiBeaconデバイスは充電やバッテリー交換なしで数週間も動作させることができます。

もしかしたら、こう思われるかもしれません。「なぜ気にする必要があるの?」と。実は、今のところは気にする必要はありません。ただし、きめ細かな位置情報認識機能を活用したアプリを開発したい開発者であれば、かなり気にするかもしれません。

このような位置情報アプリが便利になる例は簡単に思いつくでしょう。例えば、デパートがあらゆる場所に iBeacon を設置し、そのデパート向けに設計された iPhone アプリがそれらの iBeacon を使って、検索結果に表示されたアイテムの場所まで案内してくれる、といった具合です。同様に、市立図書館が利用者を蔵書の中から特定の本へ案内し、貸し出しまでできるようにするアプリを配布したり、美術館がツアーアプリを提供したり、航空会社が空港内での移動を支援するアプリ (「マイケル、あなたのフライトは 5 分後に 79 番ゲートから搭乗開始です。現在 11 番ゲートを通過しています。」) を提供したりといったことも可能です。あるいは、将来的には iPhone を iBeacon に変えられる「iPhone を探す」アプリが実現したらどうでしょう。そうすれば、
うっかりソファのクッションの中に iPhone を置き忘れても、iPad mini や MacBook を持って家中を歩き回り、「だんだん暖かくなってきた…だんだん涼しくなって…また暖かくなってきた」と歌いながら検索できるようになるでしょう。

iBeaconが開発者にとって魅力的なのは、その活用が容易な技術である点です。アプリはiOSの位置情報サービスに特定の識別子を持つiBeaconを監視するよう指示するだけで、適切なiBeaconが範囲内に入るまでアプリはバックグラウンドで待機し、リソースや電力をほとんど消費しません。適切なiBeaconが範囲内に入ると、iOSがアプリを起動して知らせてくれます。また、iBeaconは導入コストも低く抑えられます。スタンドアロンのiBeaconデバイスは1台あたり100ドル未満から販売が開始され、この機能が普及すれば価格が大幅に下がる可能性も十分にあります。既に数億台ものiOSデバイスがiBeaconに対応していることを考えると、iBeaconが普及する可能性は十分にあります。

iBeaconの要点は、iOSデバイスの位置をよりスマートに認識できるようになることです。しかし、開発者がこの技術を活用し始めるまでは、その効果に気づくことはありません。そして、あなたの魔法のようなデバイスは、さらに魔法のような存在になるでしょう。

Idfte
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